天然色

天然色

 日が短くなった。通勤途中の札幌・中の島通の街路樹も、見上げると少し色づき始めている。来週からは彼岸入り。日中は暑さが残るが、夕暮れどきは秋の風が吹く。

 そんな季節。テレビCMから、こんな歌が頻繁に流れる。〈想い出はモノクローム 色を点(つ)けてくれ…〉。松本隆さんが作詞し、故大滝詠一さんが作曲し歌った「君は天然色」。松本さんと大滝さんは、日本のロックバンドの草分け的存在「はっぴいえんど」出身の盟友。300万枚以上売り上げたという大滝さんの大ヒットアルバム「A LONG VACATION」(通称ロンバケ)の1曲目に収められた名曲だ。

 松本さんには6歳下の妹がいた。幼い頃から病弱で、小学生になると彼女のランドセルを持って、小さな手を引いて一緒に通学していたという。そんな妹が26歳で他界。ちょうど大滝さんから「ロンバケ」の作詞依頼が来ていた時期と重なり、松本さんはショックで仕事をする気にならず断った。それでも大滝さんは「他の人と仕事をする気はない」と発売予定を延期してまで待ち、誕生したのが「君は天然色」。松本さんは妹が死んだ後、渋谷の街を歩いていたら風景がすべてモノクロームに見えた経験を詞にしたそうだ。

 日本語でロックを歌うという明確な意志で「はっぴいえんど」がデビューして半世紀。松本・大滝コンビのあの曲が誕生して40年の歳月が流れ、再び名曲が鮮やかによみがえった。(広)

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