迂回

迂回

 短編を含め読みやすいとは思わないが、どういうわけか引き込まれてしまう。最近のお気に入りの作家の一人、滝口悠生さんの小説は誤解を恐れずに言うと少々回りくどい。話の展開がゆっくりで、時々迂回(うかい)する。脇道にそれたまま、なかなか先に進まないことがあるが、イライラせずに読み進められるから不思議だ。

 しかし振り返ってみると、自分自身一つのテーマについて考えるとき、思考が真っすぐに目標に向かうことは少ない。必ずあちこち寄り道をする。滝口さんの迂回もそんな人の思考回路を踏まえた計算か。「人が何かを考えたり思い出したり、言葉にするとき、向かおうとしているのとは別の方向に行ってしまうことは往々にしてあるわけで、それが一つの自然な形として小説の中に残るようにはしている」。本人がそう語るインタビュー記事を見つけた。

 要領を得ない話をする人の多くは、自分の考えを伝えることを優先しがち。大事なのは必要な情報を適切な分量で語ることで、必ずしも分かりやすさ=短さではない。29日投開票の自民党総裁選は事実上、次の内閣総理大臣を決める選挙。4人の候補者は18日、日本記者クラブ主催の討論会に臨んだが心に響く主張はあったか。総理総裁候補には内政の問題はもちろん、気候変動をはじめとする地球規模の課題への向き合い方についても詳しく語ってほしい。少々回りくどくても。(輝)

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