問い

問い

 誰でも認知症になる可能性のある時代とか。人ごとではない。日曜夜のNHKスペシャル「認知症の先輩が教えてくれたこと」を見た。

 光文社新書「認知症の人の心の中はどうなっているのか?」によると、2012年に462万人だった認知症の高齢者(65歳以上)は、25年には5人に1人、約700万人になり、85歳以上に限れば55%が認知症になるという。厚生労働省の推計。アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症などの特徴を本で読み、恐る恐る自己診断を試みたりする。

 番組が紹介したのは香川県の「認知症の人が認知症の人の悩みを聞く相談室」を設けた病院の実践。認知症の先輩らが判定を受けた患者や家族の不安に答え助言する様子の記録だ。「そう言われると本人はつらいですよ」「友人には説明してしまった方がいいよ」と、まだ記憶に残っている患者の本音の幾つかを説明したり、付き合いの経験を話したり。診断の初期に、悩みながら書いた誤字の多い日記も貴重な相談資料になる。「認知症になってもできることはある」と生きがいを持ち始める患者の姿を見ることができた。

 目の前にあるまな板を探し出せない妻を叱っているらしい夫の姿、デイサービスに出掛ける妻の持ち物を点検し財布などを取り出す夫の姿、夫の言葉や態度に泣く患者の姿も映った。

 さて自分はどんな息子だったろう。どんな夫だろう。そんな問いが深く深く残った。(水)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る