札幌芸術の森美術館の入場門に「札幌美術展 佐藤武」の看板が幻想的画風の代表作をデザインに組み込んで掲げられていた。先週、車で支笏湖畔を通って北へ向かい、開幕2日目の10日に鑑賞した。
同館が所蔵する「都市の記憶」(1998年)は、かつて氏が訪れてインドで目にした遺構に着想した、乾いた地平に広がる遺跡上空に巨大な構造物が浮かんでいる絵。人々の営みがあった、と示す文明の痕跡を夢か幻のように描いた大作の迫力にまたしても引きつけられた。
札幌を拠点にする画家の佐藤さんは73歳。中学を卒業後、昼間は働き、夜間の職業訓練学校に通った。絵は独学。65年に国際青年美術家展「日本・アメリカ展」に道勢唯一の入選で注目された。「上野の森美術館絵画大賞展」特別優秀賞(87年)、「青木繁記念大賞展」優秀賞(2002年)といった受賞を重ね、画業を切り開いてきた。
10代の頃から現在までに描いた約70点の絵の他、画家修業中から創作し、近年は発表の機会を多くした詩に加え、一眼レフカメラで撮影に励んだという風景の写真も会場に並ぶ。表現の「自在」を探究し続けている画家の心が垣間見えた思いだ。
千歳市出身の佐藤さん。小職は以前に知遇を得て、取材させてもらい、会場で4年ぶりに再会。「出合って見て感じ、心からあふれるものを作品にしていきたい」と言う。創作の泉はこんこんと湧いていた。同美術展は来年1月10日まで。(谷)









