夫婦2人の暮らしだけに、米党のわが家でも10キロ袋はかなりもつ。新米にありつけたのは結局、今月に入ってから。炊き上がりの匂い、つや、粒の立ち方、弾力、粘り、すべてが違いを主張している。箸でひと塊つまんでぱくっと味わえば、気持ちもとたんに緩む。「うまい」とつぶやいて、ささやかな満足感に浸る。
地元で取れたものはおいしい。流通のシステムに乗ると大消費地に出てゆくものが多いから、野菜なども直売はありがたい。胆振や周辺の道の駅、生産者団体などの販売所に寄るのは行楽の際の楽しみ事。ただ、米は作況がいいほどに生産者の収入を左右する米価が下落する。今年、全国で主要銘柄はことごとく下がっていて米価危機の声も聞かれる。産地では米農家の救済策を求める声は大きい。
そして昨今、海の幸の不安も増している。胆振、日高の秋サケの不漁の程度は尋常ではない。胆振海域を含む「えりも以西」は昨年、平成以降で最低のサケ来遊数だった。最盛期の4分の1の水準まで落ちた。定置網の水揚げ量で見るなら、今季はその昨年実績のさらに6割減で推移する。加えて日高以東の道東太平洋では赤潮被害が拡大し、壊滅的な状態のウニやサケの大量死、マス、ツブなど漁業資源に深刻な悪影響を及ぼしている。今のところ打つ手もない。
食を守る、産地を守る、地域を守る。そんな話を選挙カーで手を振る人からじっくり聞ける機会があればいいのだが。(司)









