慎重

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 山になかなか近づけないまままた冬。動かぬ脚をさすり、山の先輩たちの笑顔や声、言葉を懐かしく思い出す。来年こそと思いながら。

 静内町(現・新ひだか町)の支局に勤務した当時、酒の席で冗談交じりに励まされ、初めて登った山が日高山脈の主峰・幌尻岳(2052メートル)だ。それが縁で静内山岳会に入会した。

 当時、会では各町の山岳会の協力も得て山脈中部のペテカリ岳(1736メートル)を会場に町民登山会を実施していた。名前は「町民」となっているものの、登山口までの距離の長い山脈の中でも、とりわけ挑戦の難しい「はるかなる山」と呼ばれるペテカリ岳に登ることができるとあって、道内だけでなく本州方面からの参加申し込みも多かった。山荘のまきの用意、送迎バスの手配、朝食用のブタ汁の下準備を思い出す。もちろん長い西尾根を往復する11時間ほどの登山の引率や万一の事故への備えも会員の担当。下山後に参加者から「ありがとうございます」と感謝され改めて日高山脈の偉大さを認識させられた。日高山脈襟裳国定公園が制定された1981年前後のことだ。

 環境省は一帯の国立公園化に向けた作業を進めている。今年度内にも指定される予定だったが、開発や利用の規制をめぐる地元自治体などとの調整のため来年12月に延期されるとの見通しが先日、報道された。指定が荒廃につながることのないようぜひ慎重な作業を。性急は事故の元。「山は逃げない」(水)

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