治安維持法による弾圧を受けながらも、国民主権や男女平等を訴え続けた社会活動家伊藤千代子(1905~29年)の生涯を描く映画の撮影が1日、苫小牧市美術博物館で行われた。市立中央図書館が保管する千代子が獄中で書いた直筆の手紙4通を映画のラストシーンに使用するためのロケ。この撮影でクランクアップとなり、桂壮三郎監督(74)は「とてもいい作品になるという手応えを感じた」と語る。作品は来年4月中旬から全国公開を目指しており、2日には道庁で記者会見が行われた。
千代子は長野県出身の共産党員。治安維持法違反の容疑で逮捕されて拷問を受けながらも仲間を励まし続けたが、急性肺炎のため24歳で死去した。民衆の幸せを願い、戦争に反対し、男女平等・社会変革に挑んだ若き女性の生涯を追った映画のタイトルは「わが青春つきるとも―伊藤千代子の生涯―」。主役の千代子役には新人の井上百合子さんを抜てきし、窪塚俊介さん、竹下景子さん、石丸謙二郎さんらベテラン・中堅俳優も多数出演する。
1日に撮影された千代子の手紙は、亡くなる直前に獄中から夫の浅野晃(1901~90年)の母と妹に宛てて書いた。厳しい環境に苦しみながらも、自分の生きる道を追求しようとする強い気持ちがしたためられている。浅野は戦後を苫小牧で過ごした縁で78年、当時の中央図書館長にこの手紙を託した。それ以降、同館で保管されている。
手紙を館外に持ち出して撮影するのは今回が初めて。制作費の募金活動などに取り組む苫小牧実行委員会(入谷寿一実行委員長)をはじめ、同図書館や美術博物館、市生涯学習課や市観光振興課などの協力で実現した。志半ばで死去した千代子の心境を今に伝える資料として、映画のラストシーンに登場予定。約1時間の作業で4通が映像に収められた。
撮影は10月上旬から長野県や茨城県、埼玉県などで行われ、この日が最終日。入谷実行委員長は「苫小牧の地ですべての撮影が終わったことを喜びつつ、次は上映運動に力を入れたい」と意気込む。
2日、道庁で行われた記者会見で桂監督は「千代子さんの生きた時代背景をきちんと描きたかった。2時間10分ぐらいの引き締まった作品で、多くの若い人にも見てもらいたい」と強調。原作の「時代の証言者 伊藤千代子」を書いた藤田廣登さん(87)は「弾圧にも節を曲げず、ひたむきに生きた千代子さん。映画は今日の悩む青年たちにも生きる力になるのでは」と話した。
映画は編集作業を経て、来年3月末に完成予定。桂監督は「道内では50数カ所で上映を目指すが、さらに全道の市町村で上映の輪を広げたい」と意欲を示した。
















