移り変わり

移り変わり

 「夏になったら鳴きながら必ず帰ってくるあの燕(つばくろ)さえも、何かを境にぱったり姿を見せなくなることもあるんだぜ」―。映画「男はつらいよ」シリーズ主人公の車寅次郎のせりふがある。

 機嫌を損ねると「つばくろ」すなわちツバメを引き合いに身内にすねる際の決まり文句。今は亡き渥美清さん演じた寅次郎が本州では飛来と巣作りが吉兆と伝わる渡り鳥に自身を例えて「家出」をほのめかし、喜劇をかき回す場面はこっけいだ。

 それはそうと胆振の東側に暮らすわれわれの身近な所で幾つかの種類の鳥が姿を見せなくなりつつある。日本野鳥の会がウトナイ湖で行った調査によるとアカモズやホオアカなどの小型の鳥類が極端に減ったという。北海道では1980年代までに普通に見られたシマアオジも同湖でなら2015年の確認がこれまでのところ最後。渡り先の大陸での乱獲や生息地減少が個体激減の要因と言われている。

 かたや増えたのはキバシリやクロツグミなど。昨年はタンチョウ親子が確認され、驚いた。地球が暖まった約6000年前の「縄文海進」時は海底で、以後の寒冷化で南側が陸となって湖が形成された同湖。周辺の湿地は渡り鳥の交差点で動植物が息づく所で、われらの生活圏のごく近傍だ。苫小牧市美術博物館で開催中の企画展「ラムサール条約登録30年ウトナイ湖 うつりゆく自然とその未来」は12日まで。身近な地勢を改めて知るための展示物がそろう。(谷)

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