極光

極光

 小学生の頃の冬の夜、住んでいた家の北西方向の山際がうっすらと朱色に染まった。記憶に残る、最も古い出来事の一つかもしれない。

 初めて見たオーロラだ。父が「夕張の方で大火事でも―」と言った気がする。テレビの普及期だったが、あったとしても画面は白黒。白黒印刷の新聞を詳しく読む習慣も子どもにはなかった。朱色の空は、学校でも特に話題にならず記憶が確かめられたのは数十年後のことだ。

 7日の北海道新聞にオーロラの写真が載った。64年前に静内町(現新ひだか町)で撮られたもので、国内最古のオーロラのカラー写真の可能性もある。

 大規模な太陽活動があったとされる1957~58年に観測されたオーロラの資料を、名古屋大学の研究チームが再調査していて発見したそうだ。全国の観測所やアマチュア天文家が観測に協力したが、未公開のため行方不明になった資料も多いそうだ。写真は長野県の東京大木曽観測所に残っていたものだ。

 色や形の変化の仕方を詳しく説明できるほどに記憶は詳細ではない。それでも、撮影に挑み成功した人が、日高の中核・静内町にいたことを誇りに思う。はるか昔のオーロラの、朱色や黄色の鮮やかな輝きが懐かしくて、何度も何度も見入った。

 今はデジタルカメラやスマートフォンで手軽に写真撮影が楽しめる時代。手軽さが、写真の重みを損ねている気がしないでもない。64年前の一枚にそんなことも考えさせられた。(水)

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