ヒグマが農地や大都市の住宅街を縦横に歩き回り人を襲った2021年。「クマは出るんじゃない。居るんだ」。新米記者当時に、営林署員(当時)から聞いた言葉を、繰り返し思い出した一年―。
21年の4月以降、11月末までにヒグマに襲われて命を失ったのは4人、負傷者は8人の計12人。1962年の統計開始以来で初めての数だという。死者数4人も、日高山脈・カムイエクウチカウシ山で福岡大学の学生3人が1頭のヒグマに追われて命を失った70年に並ぶ多さだ。山菜採りの男性、林道散策中の女性のほか草刈り作業中の母娘やハンターが犠牲になった。札幌市東区では通勤中の4人が襲われ、その画像はテレビで繰り返し放映された。道警がまとめた1~11月の目撃件数は前年を2割上回る2166件。胆振や日高も含め各地で目撃されている。ヒグマは「居る」のだ。
20年ほど前、雪解けの始まった支笏湖に近い国有林の丸山で見た動物の足跡を思い出す。歩くスキーで苫小牧側から頂上を目指していた。途中からはウマほどの大きさの足跡をたどるように歩いた。白状すると頂上での休息中、あれは何の足跡か、どこへ行ったのかを考えなかった。周囲に人家はなく伐採作業の音も聞こえないのにウマがいるのか―。自分の無知、警戒感や注意力の欠如にあきれる。
例年になく雪の多い冬。しかし雪は必ず解ける。雪が解ければヒグマの季節が始まる。昨年何を学んだかが問われる。(水)









