「地元学」という言葉を聞いたことがあるだろうか。正式な学問ではない。自分たちが住む土地を見直し、伝統的な営みや文化、自然などの魅力を引き出して地域振興につなげる方法のことである。
提唱者は熊本県水俣市の元市職員吉本哲郎さん(73)。「地元にあるものを探し、組み合わせて新しいものをつくる。それが地域を元気にする」。唱えるまちおこしの手法は、今や各地に広がりを見せる。
地元学は、化学工場が招いた水俣病問題に長く苦しんでいた水俣を再生する中で生まれた。1990年代、住民が地元の豊かな環境に気づき、守る活動を実践。偏見の目もあった水俣を先進の環境都市に変え、郷土への誇りを取り戻した。それを後押ししたのが吉本さんだった。
水俣の限界集落にも地元学が取り入れられた。里山風景や山菜採りなど住民の当たり前の日常は都会人にとって非日常。観光資源としてうまく編成することで、親戚ぐらいしか来なかった集落に都会から人が訪れるようになり、未来への希望を失っていた住民も元気になった。地域にはそれぞれに底力がある。それに磨きを掛け、新たな価値を生み出すことで土地や暮らしは変わる。吉本さんの持論だ。
地元学について吉本さんは29日、白老町の地域食堂グランマの林啓介さん(40)と共にオンライン配信で伝える。参加希望者はグランマ=電話0144(85)2870へ。まちおこしのヒントになるだろう。(下)









