国立がん研究センターの集計によると人口10万人当たり何人ががんで亡くなったかを示す「がん死亡率」の47都道府県別順位で、北海道は2020年、青森県に次いでワースト2となった。19年は下から5番目だったが死者数が0・9増えて、78・9になった。
自分や家族が、がんと関わった経験を持つ人は多いはずだ。義父ががんと診断されたのは74歳の時だった。病名が気になった義父は見舞いに訪れた娘婿と2人だけの病室で、遠回しに問い掛けてきた。「何でこの年になってからこんな病気になるんだ?」。どうとでも取れるようにごまかしたのだろう。向こうを向いて無口になった義父の骨ばった細い背中を思い出す。
義兄ががんを患ったのはその数年後だ。治療方針の説明に近親者として立ち会いを求められた。若い医師は、転移が進んでいること、その数は無数で、もう外科的な対処は不可能である―と淡々と説明した。もっと言い方はないのか腹が立った。
実兄は手術をめぐって医師と意見が合わなかったようだ。死の数週間前、見舞った。声がすっかりかすれて聞き取りにくくなっていた。持参した北海道の雪や氷の写真を繰り返し見ていた。「この次は育った家付近の写真を持ってくるから」と別れたが「春には」という約束を果たす前に、スッと旅立った。
「もっと早く検診を受けていれば―」。がんによる死の数は本人や家族の、後悔や無念、反省の数と、きっと同じだ。(水)









