五輪開幕後に発覚したドーピング問題の渦中にいるフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会)。15日のショートプログラム(SP)は、金メダル候補としての地力を示してトップに立った。
冒頭のジャンプで着氷が乱れたミスを除けば、しなやかな表現力もジャンプの精度も一級品。観客や関係者から、15歳の少女へ惜しみない拍手が送られた。
しかし、動揺をのぞかせるシーンもあった。演技直後はこらえきれない様子で表情を崩し、涙。各国の報道陣が待ち構えた取材エリアを無言のまま足早に通り過ぎた。SP3位の坂本花織(シスメックス)ら上位3人が臨むはずの記者会見には姿を見せず、沈黙を貫いた。
一夜明けた16日。国際オリンピック委員会(IOC)のアダムス広報部長は、17日の女子フリー後にワリエワが3位以内に入った場合も会見の欠席を容認する姿勢を示し、「強要は適切ではない」と述べた。
スポーツ仲裁裁判所(CAS)の判断により、IOCはワリエワの出場継続を阻止できなかったが、未成年者の精神面に及ぼす影響に配慮して柔軟な対応を見せた。
違反の有無が確定するまで、数カ月はかかるとも言われている。さまざまな情報、批判的な意見や臆測が世界中を飛び交う中、最終組で滑走するワリエワに再び大きな注目が集まる。
―検体から3種類の心臓治療薬
【ニューヨーク時事】北京五輪に参加しているフィギュアスケート女子で15歳のカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会=ROC)をめぐるドーピング問題で、昨年12月に採取した同選手の検体から、心臓の治療に用いる3種類の物質が検出されていたと15日、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が伝えた。
問題となった禁止薬物トリメタジジン以外の2種類は、禁止リストに入っていないL―カルニチンとハイポクセン。ワリエワは検査の際に提出する書類で、この2種類と免疫力向上を目的としたサプリメント「スプラディン」の使用を申告していたという。
米国反ドーピング機関(USADA)のトラビス・タイガート最高責任者は、「持久力を高めて疲労を軽減し、酸素を効率的に取り込むことを狙った組み合わせに見える」と指摘。L―カルニチンは点滴などによる大量摂取は禁止されており、過去には米国の陸上指導者アルベルト・サラザール氏が、選手への投与方法の違反で処分を受けた。
ワリエワ側はトリメタジジンに陽性反応を示したことについて、祖父の心臓病の薬を誤って摂取したと主張していた。

















