旧穂別町(現むかわ町穂別)の横山正明元町長(1909年~66年)が町内に建立した「賢治観音」や水力発電所設置計画について、地元の詩人斉藤征義さんが考証をつづったノートが、苫小牧市の私設文学館「斉藤征義の宮沢賢治と詩の世界館」(王子町)で見つかった。自筆で清書された未発表の資料。賢治の思想を町政に生かそうとした横山元町長に対する斉藤さんの強い関心がうかがえる。
ノートは、穂別にあった斉藤さんの書斎の資料を詰めた段ボール箱の中から見つかり、今年1月、丸山伸也館長(69)が内容を確認した。
B5判、36ページのノートでは、横山元町長と詩人浅野晃(01年~90年)が賢治の童話「グスコーブドリの伝記」について「夜を徹して語り合った」と記述。元町長は「ブドリ」の自己犠牲と自らを重ね、賢治の思想を導入する精神的な象徴として賢治観音を建立したとしている。
伝記には人工的に火山爆発を起こし、大量の炭酸ガス放出による温室効果で冷害を食い止める構想が描かれているが、元町長の計画も鵡川上流部にダムを建設することで、防災と造田、無灯地区解消を促す「自然的福祉」を目指したと指摘。賢治観音や発電所は横山元町長にとって、自身の思想を物心両面で支える物質的、精神的豊かさの象徴だったと考察している。
書かれた時期は、帯広市の賢治研究家木呂子敏彦(14年~2004年)や横山元町長の遺族らから町長関連の資料を借り受けた記載のある書簡の時期から、1977年から78年までの間とみられる。
丸山館長は「横山元町長のことは賢治研究をきっかけに知ったと思われるが、賢治以上に元町長への関心が強かったのでは」と分析。「町史研究においても貴重な資料で、できるだけ早い時期の出版を目指す」としている。
同館では、開館前の2019年10月に「穂別のTVA」と題した水力発電所設置計画書も見つかっている。「穂別のTVA」は、1930年代に米国で進められた電源開発事業を穂別町独自で進める決意と具体的な計画がつづられている。
斉藤征義(さいとう・まさよし) 1943年帯広市生まれの詩人。元新聞記者で旧穂別町役場にも勤務した。99年詩集「コスモス海岸」で北海道詩人協会賞。賢治研究の第一人者としても知られる。2019年1月に75歳で死去した。
















