【北京時事】北京冬季パラリンピックの開会式は4日、北京市の国家体育場(愛称・鳥の巣)で行われた。日本選手団はパラアイスホッケーと車いすカーリングを除く4競技に29選手が出場。2月の北京五輪で日本勢は過去最多のメダル18個を獲得。その勢いのまま、パラでもメダルラッシュの期待が高まる。
開会式で日本は、2大会連続出場の川除大輝(日立ソリューションズJSC)が旗手を務めて入場。大会は新型コロナウイルス感染対策のため、選手を含む関係者全員が外部との接触を遮断した「バブル」内での行動が義務付けられる。
競技は5日に始まり、2018年平昌大会のアルペンスキー女子座位で、金1個を含む5個のメダルを獲得した村岡桃佳(トヨタ自動車)が登場。バイアスロンでは5大会連続出場の出来島桃子(新発田市役所)らが挑む。
― 戦火消えず異例の祭典、パラアスリートが問う平和
共生社会と平和をうたうパラスポーツの祭典が、重苦しい世界情勢の中で幕を開けた。ロシアのウクライナ侵攻。世界中から非難の声が上がり、政治や経済の混乱を招いた。難民が増え続け、戦火は消えない。スポーツに真摯(しんし)に取り組むアスリートにとって、晴れ舞台とはおよそ懸け離れた雰囲気だ。
ウクライナ選手団は戦災を逃れ、陸路で長時間かけて中国にやって来た。ウクライナ・パラリンピック委員会のスシュケビッチ会長は言い切った。「ここにいることが象徴するのは、ウクライナが国として存在すること。大会に来ないことはあり得なかった。われわれの目標は平和だ」
一方、現地で練習していたロシアと同盟国ベラルーシの選手は、開会式前日に除外の決定を受けた。一度は出場を認められながら、周囲の反発で運営に支障を来すと判断され覆った。冬季パラの強豪で知られ、国際大会を通じて親交のある日本選手も多い。アルペンスキー男子のある日本選手は「複雑さを感じ、葛藤がある」と言った。
為政者の軍事行動で、理不尽な思いをさせられた選手たち。国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長は、大会から去る選手を「犠牲者」と表現した。
ロシアが国連総会による「五輪休戦決議」に違反したとされる中、異例の大会が始まった。先の北京五輪では、ドーピングやルールの適用をめぐって、スポーツの公平性と高潔さについて議論を呼んだ。パラアスリートの躍動と言葉が今、祭典の意義を問う。
― IPC会長平和訴える 「戦争や憎しみの時代ではない」
国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長が、スピーチで平和を訴えた。ウクライナに侵攻しているロシアを名指しすることは避けたが、「今、世界で起きていることに震え上がっている。21世紀は対話と外交の世紀であり、戦争や憎しみの時代ではない」と力を込めると、会場からは大きな拍手が起きた。「五輪休戦協定は尊重されるべきだ。侵害されてはならない」などと続け、最後に「ピース(平和)」と大きな声で訴えた。
― 除外のロシアCAS提訴せず、法的助言に従う
国際パラリンピック委員会(IPC)がウクライナへの軍事侵攻を理由にロシア選手の北京パラリンピック出場を認めなかったことについて、ロシア・パラリンピック委員会(RPC)は4日、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議を申し立てないと発表した。法的助言に従ったとしている。
IPCはロシアと同盟国ベラルーシの選手の出場を一時は認めたが、複数のチームが反発して不参加を表明する事態となり、一転して除外を決めた。
― 日本勢、明るく行進
日本選手団はノルディックスキー距離男子の川除が国旗を大きく振って先導。選手たちは手を振りながら明るい表情で続いた。
21歳の川除は、2018年の平昌パラリンピックに日本勢最年少で出場。今大会はメダル獲得の期待が大きく、「2大会目で旗手を務められるうれしさもあるが、責任もある。気持ちがより入っている」。7日の20キロクラシカルから登場する。
選手団の主将を務めるアルペンスキー女子の村岡は、競技を翌日に控えているため出席しなかった。ノルディックスキー距離男子で、日本勢最多を更新する7大会連続出場の41歳新田もトレーニングや体のケアを優先した。
―ウクライナ、笑顔なき入場 拳突き上げる選手も
ウクライナ選手団が4番目に入場すると、会場から温かい拍手が湧き起こった。母国がロシアによる侵攻を受けている中での出場。選手たちに笑顔はなく、硬い表情を崩さないまま行進した。
選手団は介助者やスタッフを含めて総勢54人(選手は20人)。航空機で北京入りする予定だったが、侵攻によって空路が閉ざされた。バスで何日もかけ、ようやくたどり着いた。ウクライナ・パラリンピック委員会のスシュケビッチ会長は「ここに来られたのは奇跡だ」と言った。
ウクライナ勢最年長の43歳でバイアスロンに出場するビタリー・ルキヤネンコは、妻と娘と連絡が取れない状況が続いている。広報担当者は「このような話があまりにたくさんある。誰もが不安を抱えている」と状況を明かす。
戦争反対への強い意志を示したのか、左手の拳を突き上げて進む車いすの選手もいた。想像を絶する苦しい状況の中、競技に臨む。






















