村岡、集中力で『金』―森井も連続表彰台〔北京パラリンピック アルペンスキー・スノーボード〕

アルペンスキー女子スーパー大回転座位、村岡桃佳の滑り=6日、延慶(時事)

 【北京時事】北京パラリンピック第3日は6日、アルペンスキーのスーパー大回転が行われ、女子座位で村岡桃佳(トヨタ自動車)が金メダルに輝いた。5日の滑降の金に続き、今大会2個目のメダル。立位の本堂杏実(コーセー)は8位。
 男子座位では森井大輝(トヨタ自動車)が滑降に続いて、今大会2個目の銅メダル獲得。立位は小池岳太(JTBコミュニケーションデザイン)の24位が日本勢最高だった。
 スノーボードクロスは予選が始まり、日本勢は全員が決勝トーナメントに進んだ。下肢障害LL1の小栗大地(三進化学工業)は6位、小須田潤太(オープンハウス)は7位。同LL2の市川貴仁(エレマテック)ら、上肢障害の大岩根正隆(ベリサーブ)も予選を突破した。

―きょうは及第点〔スノーボードクロス〕
 小須田潤太 きょうは及第点。実力を出せば表彰台に届くと思っている。持てる力を出し切るだけ。
 ◇楽しい
 岡本圭司 めちゃくちゃ楽しい。(7日は)限界を超えた滑りをして、見ている人を興奮させたい。
 ◇ふがいない
 田渕伸司 模索しながら行くしかなく、無我夢中だった。ぎりぎりの結果でふがいない。

―村岡「自分を信じて」
 スタート直後に、村岡をアクシデントが襲った。「コンタクトレンズが両目ともずれた」。やがて左目の一枚は完全に外れた。視界がぼやけ、コースがはっきり見えない。裸眼での視力は0.1程度だという。
 もはや感覚に頼るしかない。集中力を極限まで高めた。朝のコース下見の記憶をたどり、ぼんやり映る青色のコースラインで自分と旗門の位置を把握。丁寧なライン取りでスピードを維持し、平昌パラで金2個のアナレナ・フォルスター(ドイツ)をわずか0秒11差で抑えた。
 上達のために上位選手の映像を見て学ぶことは、スポーツ選手にとって珍しい手法ではない。しかし、村岡のやり方は違う。「ほとんどしない。自分のラインを信じて滑っている」
 もともと、練習で得た感触を基に思考をめぐらせ、しっかりと分析してからレースに臨むタイプ。だから想定外の事態にも、「自信を持って滑れた」。常にイメージトレーニングを繰り返して研ぎ澄ませた感覚が、思いもよらぬ苦境で手助けとなった。
 最初の2種目で金メダルを二つ。1個だった前回の平昌を早くも超えた。しかも、得意の技術系がまだ残っている。「ハプニングがあってベストを尽くし切れなかったので、悔いが残る。まだまだいけたな、という気持ち」。飽くなき向上心も強さを支えている。

―森井、悲願の金へ緩みなく
 アルペンスキーの男子座位で、森井が連日の銅メダル。しかし、難関コースを攻略した解放感があった前日の滑降とは違い、表情は渋い。トップと0秒92差。「悔しさは(タイムが)近いほど逆に強くなる」
 転倒を恐れず最短距離を狙う積極的な滑り。しかし終盤に失速してしまい、掲示板の順位を見て首をかしげた。「なぜタイムが出なかったのか。しっかりと調べて次のレースにつなげたい」と反省が口を突いた。
 41歳のベテラン。身体能力の衰えも感じる中、チェアスキーの改良に心血を注ぎ、一線級の実力を維持してきた。5大会連続のメダル獲得で、総数は7個になった。だが、表彰台の真ん中はまだ経験していない。「チャレンジを恐れず、進んでいくことが重要。きょうの僕より、あしたの僕の方が速いと思っている」。悲願の金へ、気持ちに緩みはない。

―第4日 新田、川除らが登場
 【北京時事】北京パラリンピック第4日は7日、ノルディックスキー距離が行われ、男子20キロクラシカル立位に7大会連続出場の新田佳浩(日立ソリューションズ)、川除大輝(日立ソリューションズJSC)らが登場する。
 アルペンスキーはスーパー複合が行われ、女子は座位に、滑降とスーパー大回転を制した村岡桃佳(トヨタ自動車)が出場。男子座位では森井大輝(同)が今大会3個目のメダルを狙う。
 スノーボードクロス男子では、決勝トーナメントで下肢障害LL1の小栗大地(三進化学工業)、同LL2の市川貴仁(エレマテック)ら6人が表彰台を狙う。

―新田、集大成の舞台へ
 ノルディックスキー距離男子の新田佳浩(日立ソリューションズ)は、北京パラリンピックを集大成と位置付けている。冬季の日本勢最多を更新する7大会目の舞台を前に「後悔がないように」と繰り返してきた。照準を合わせてきた20キロクラシカル立位は、7日に行われる。
 17歳で1998年長野大会に出てから、日本をけん引してきた。これまで獲得したメダルは金3個を含む五つを数える。41歳となった第一人者の最大の特長は無駄がなく、美しいと評されるフォームだ。
 3歳の時、祖父が運転していた農業機械のコンバインに巻き込まれ、左腕を切断。片手だと普通は軸がぶれてしまうが、新田は強い体幹に支えられ、走りが崩れない。
 今大会に向け、新たな試みにも挑戦してきた。マラソンのフォアフット走法のようにスキー板の前寄りから着地する走りに取り組んだ。陸上競技をしている小学5年の長男のランニングシューズが、前ばかりすり減っていたことから着想を得た。「反発する力をどの方向に使うのが重要か。そういうところにヒントがあるのかな」と考えを明かす。
 右腕に急にしびれが出ることもあり、体の状態が万全でない中で調整を重ねてきた。「最高のパフォーマンスを出せばメダルに近づくと思う」。表彰台に立って有終の美を飾る。

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る