戦いの奴隷

戦いの奴隷

 調べ物があって苫小牧市末広町の中央図書館に行った。隣接してサンガーデンがあり、施設内の喫茶店で休憩を取ろうと中を歩くと、通路や階段の脇のシクラメンやツツジ、ランが花を咲かせていた。季節を超えたり、先取りして咲いている花に不意に出合い、気持ちが安らいだ。強い風と雪が春に「待った」をかけた日の午後。癒やしのひととき。

 つかの間、見慣れた花に気持ちが大いに緩んだのは、毎日の報道で触れるウクライナの映像に心が疲れていたからかもしれない。2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻は間もなく4週間になろうとしている。たくさんの血が流れ、生命が失われ、破壊され尽くす街、家族と離れて他国に逃れ悲嘆にくれる人々の姿が目に焼き付く。戦場の現実におののき、戦争を始めたロシアの指導者への怒りが高ぶる。日々それが増幅され憎悪へと変わる己心も恐ろしい。核兵器で威嚇し目的を果たそうとするに至っては、未来永劫(えいごう)許してはならない。

 「どんな戦争といえども、容易なものはない。一度戦争に身をゆだねた政治家は、制御し難い戦いの奴隷となる」。第2次世界大戦時の英国首相、ウィンストン・チャーチルの言葉だ。かろうじての平和だったとしても、そのバランスを壊したこの暴挙をどうしたら止められるだろうか。三度世界に広がる戦火の可能性を前にすれば、答えは容易には出ない。あまりにもどかしく、つらい。(司)

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