反戦

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 この数日「もずが枯れ木で」の詩と旋律が耳の奥に流れ続けている。「兄(あん)さは満州へ 行っただよ 鉄砲が涙で光っただ もずよ寒いと鳴くがよい 兄さはもっと 寒いだろ」は3番の詩。

 1935年、詩人サトウ・ハチローさんの「百舌(もず)よ泣くな」の詩に東京の小学校教師、徳富繁さんが曲を付けたそうだ。教え子らに楽譜を配り、疎開で全国に広まった。日中戦争の開戦当時に、日本で作られた反戦の歌だ。歌手、岡林信康さんがレコードに収録した。

 歌は時代とともに聴く人の心を捉えて広がっていく。自分が高校生の頃はベトナム戦争の時代だった。インターネットもスマートフォンもなく、情報源はラジオと小さな白黒画面のテレビ、郵便配達さんが届けてくれる白黒写真の新聞だけ。ラジオから流れ続ける「悲惨な戦争」や「花はどこへ行った」など反戦の歌を聴いて家族や恋人の不在や死の悲しさ、恐ろしさを想像した。歌で戦争が止まる訳もないことは分かっていたが、詩は想像を支え続けてくれた。

 2月24日、ロシアのウクライナ侵攻が始まって1カ月。学校や病院、避難所の劇場を戦車砲やミサイルで破壊しても攻撃は止まらない。核兵器や生物・化学兵器の使用、子どもを強制連行、大型商業施設爆撃、降伏要求と徹底抗戦など、恐ろしい言葉が新聞やテレビで繰り返し使われる。何が行われているのかを冷静に学びたい。自分にできることは何か、考えたい。(水)

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