事実

事実

 事実を知らされないということがどれほど恐ろしいか、改めて知らされた思いだ。ロシアのプーチン大統領は「ウクライナ政権によって虐げられ、ジェノサイド(集団虐殺)に遭ってきた人々を保護することが目的だ」と同国への侵攻の理由を説明した。さらに、ウクライナが生物・化学兵器を保有していると主張し、自身が同兵器を使用する兆候が指摘されている。そして、ロシアにはそれらの言葉を信じる国民がいる。NHKの報道によると、ロシア政府系の世論調査機関が1600人を対象に行った電話調査で、74%が軍事作戦を「支持する」と回答したという。

 戦争開始から1カ月。ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、日本の国会で演説した。オンラインではあったが、大統領の肉声は聞く人の心を打った。だが、この演説がロシア国内に伝えられることは決してない。

 ロシア国営テレビのニュース番組放送中に「NO WAR」と書いた紙を掲げ、「戦争をやめて」と訴えた編集スタッフのマリーナ・オフシャンニコワさんは当局に拘束され、罰金刑を科された。同じ国営テレビでニュースキャスターや欧州特派員も務めたジャンナ・アガラコワさんは「私の取材はプロパガンダに使われてきた」と軍事侵攻に抗議し、辞職した。

 戦争反対の意思を表すだけでも命懸けの勇気がいる。2人の心の叫びを聞き、自由な言論の尊さと、事実を伝える役割の重さをかみしめる。(吉)

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