まだ

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 「孫の手」という物を初めて買った。正確にいうと、知人が買い物のついでに探してくれた。「162円の孫」の、お世になっている。

 背中は、忙しい時や眠い時にかゆくなる。伸びにくくなった腕や肘、指の届かない場所ほどかゆい。家人が在宅の時は、位置の微調整を指示しながら強弱も注文してかいてもらうのだが不在の時や就寝後などに突然かゆみに襲われることがある。

 先日、やっぱり手の届かない所がかゆくなった時に、ある道具の名前が頭をよぎった。素晴らしい名前の竹製の道具「孫の手」。あれ一本ですべての問題が解決するのでは―。家人とも意見が一致した。問題は、どこに売っている物かが分からないこと。医療器具というほど大げさな物でもないし、おもちゃでもない。観光地の土産物店に木刀などと一緒に並んでいるのを見た気もするが、近くに観光地はない。近所のスーパーで聞くと「置いていませんねェ」。

 入手はできても、正確にかゆい所をかくには持ち方や力加減の難しいことが分かった。幼い頃、就寝前にストーブのそばで背中をかいてもらった時の母の手の優しさを思い出しながら、家人の手に頼ることが多い。

 コロナ禍が続く。ワクチンの4回目接種がニュースになっている。本物の孫が頻繁に遊びに来て祖父母のかゆい所を覚えられる日はまだ先のようだ。日曜大工店の介護コーナーにあったという孫の手で、自前のかゆみ介助訓練の日々が続く。(水)

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