「金がない!」。子どもから、そんな緊急の連絡を受けたことがある。もう20年ほど前のことだ。たまの休みに遠出を―と自宅を出て、20キロほど車を走らせたあたり。
慌てて自宅へ戻り、家人が残高の少ない口座から残高ゼロの口座へ送金をして一件落着。仕送りに慣れない親と、初めて自活をする子ども。初心者同士が引き起こした大笑いの騒動の一つだ。春になると思い出す。
息子2人に仕送りをした。家計の概要は説明したが、貧乏は教えなくても身に付くものらしい。家人が確認したところによると、長男の口座の出し入れには癖があった。残高があっても1000円か2000円ずつしか引き出していなかった。学資ローンの返済で、卒業後も口座を見る機会があったが「小額下ろし」の癖は、変わっていなかったそうだ。もう治ったか。
4月が始まった。新聞やテレビには新しい年度の不安がぎっしりと並んでいる。ロシアが戦争を引き起こして心を乱し続ける。戦争の影響もあって物価の上昇は例年になく厳しい。食料品やトイレットペーパーなど日用品の値上がりが目立つ。家計も自活も、まずは節約に追われる新年度の始まり。自活初心者たちにはさぞ対応が難しいに違いない。コロナ禍は第6波からずるずる第7波に移行するとの予測もある。警戒が必要だ。
新聞には「18歳は新成人」と大きな見出しも。得られる自由の大きさと重なる責任の重さをひとりぼっちで思う春―。(水)









