先月まで残雪が多かった苫小牧市も新年度に入り、すっかり春らしくなった。この時期になると駆け出しの記者時代、苫小牧測候所に足しげく通った日々を思い出す。
測候所は2004年まで、市内しらかば町にあった。今、日帰り入浴施設とパチンコ店が入った建物がある辺りだ。最もよく通った頃の所長は稚内市出身で父と高校時代、同じ野球部に所属していた。どことなく顔が父と似ていたらしく、先方から「もしかして」と聞かれ、すぐに判明した。そんなこともあって、その後は「きょうは記録的な暑さでは」「初霜はまだか」とアポなしで押し掛けても歓迎してもらえるようになった。こわもてで口数少なめの所長だったが目視や体感による遠望観測、百葉箱の話などたくさん勉強させてもらった。
地域の季節観測を担っていた測候所は一番身近な取材先で、文字通り毎日通った。「無くなる」と聞いた時にはひどく落胆した。自動観測システムの整備で職員常駐の必要性が薄れたとし、無人の特別地域気象観測所に移行したが東胆振に有人の観測拠点が必要だという気持ちは当時から揺らがない。海溝型巨大地震に伴う太平洋沿岸の津波の浸水想定で、浸水面積が道内最大の1万ヘクタール超の苫小牧市。活火山・樽前山も主要な火口や噴気孔で高温状態が続いている。防災の初動には、専門家の目も欠かせない。年度替わり、気象のプロの顔を思い出しながら改めてそう思う。(輝)









