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 ロシア大統領のプーチン氏はスマートフォン(スマホ)を使わず、インターネットの交流サイトも利用せず、紙の情報や側近の説明だけに基づいて判断をしている―。

 テレビニュースの解説者が、「―と言われている」と紹介していた。電話機能以外の使用方法を覚えようとしないものぐさなら自分と同じかもしれない。「プーチンと同じ?」。家人が冷たい目で軽蔑するようににらむ。買い換えかどうか決断する前に旧型携帯の電波帯の停止が始まった。ドコモは2026年3月までと報道されている。

 ロシアのウクライナ侵攻で報道や情報・通信機器の評価や信頼度が変わっている気がする。スマホを握り締めて命懸けで取材し、原稿を送り続ける記者たちがいる。一方には政府発表を無表情で垂れ流すロシアのテレビニュースがある。第2次世界大戦当時の日本の大本営発表と報道機関の関係と同じだろう。日本では名誉毀損(きそん)の道具やゲーム機のように扱われることの多いスマホは、ウクライナでは貴重な情報機材だ。

 親の安否を気遣い、留学を中断してウクライナへ帰国した青年と母親の、スマホを手にした会話をテレビで見た。「私の写真を撮らないで」と母親。「どうして? 母さんだって僕のこと撮るじゃない」と息子。「あんたは格好良いからよ」。そんな内容だった。答える母親のうれしそうな表情。スマホが、家族と祖国の危機の中で、心をつなぐ大活躍をしている。(水)

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