諦め

諦め

 去る者は日々にうとし―。いかに親しくとも、遠ざかれば記憶は年月の経過とともに薄らぐもの。JR日高線鵡川―様似間116キロが昨年4月1日付で廃止となって、早いものでもう1年が過ぎた。

 北海道新幹線の並行在来線・函館線のうち、長万部―小樽間140・2キロのバス転換を沿線9市町と道が決めた。新幹線の開通に伴う並行在来線の廃止は1997年、長野新幹線開通時のJR信越線の一部11・2キロ区間以来、2例目だという。関連の報道を読みながら考えた。

 もし道新幹線の札幌延伸ルートが苫小牧、千歳経由になっていたら、千歳線や室蘭線はどうなっただろう。札幌圏以外の住民や空港利用者以外の理解を得られる落としどころは見つけられたのだろうか。有珠山や樽前山の噴火の対策はどうなっただろう―。妙案は浮かばない。

 日高線に続いて根室線の一部も今年1月、バス転換が決まった。大雨や高波などの災害があれば、復旧費用の負担や復旧後の運行への負担を求める「請求書」が自治体に届く仕組みが確実に出来上がったようだ。沿線の自治体や利用者は、災害だけでなく、鉄路の廃止と経済的負担増加を常に恐れ続けなければならない。新幹線延伸もその条件に加わったということか。

 函館線バス転換が決まった会議で出席した首長から、一日も早いバス転換を求める意見が出たそうだ。「決まった以上は早い方が」という覚悟か。鉄路への深い深い諦めなのか。(水)

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