「隠語」とは、特定の仲間の中だけで通じる言葉―と、手元の国語辞典。大手牛丼店の常務取締役が大学の講座で不適切な隠語を大盛りにして使い、役職を解かれた。
高校に入学した当時、隠語を常用する新しい友人と知り合った。先生は「センコウ」、友達は「ダチ」、大切な友人は「マブダチ」―。確かそんな言葉だった。仕入れ元がどこかは知らないが、小規模な高校ではさほど広まらなかった気がする。
常務氏は、都内の大学の社会人向け講座で「若い女性を牛丼好きにする経営戦略」を受講生から募る際に「女性が薬物中毒になるような企画」などの言葉を使ったという。「不適切な表現で不愉快な思いをする方がいたら申し訳ない」と前置きしたとの報道もある。しかし地方出身者を蔑視し、若い女性に性差を押し付けるような表現に、派遣企業側が「到底許容することができない」と判断した。新聞には差別用語や不快語、特定の業界でしか通じない隠語は使わないという大原則がある。発言をめぐる報道が少し分かりにくいのは「シャブ漬け」などの隠語を書き直しているからだ。
報道という業種には、隠語の類が多い。新人当時、警察をサツ、刑事をデカ、家宅捜索をガサ入れと言う先輩たちの会話について行くのが大変だった。
隠語不使用の原則には「難しい専門用語やカタカナ語、官庁用語を使わない」とも加えられている。常務氏の失策を参考に改めて紙面を読み直す。(水)









