出航判断「最終的に私」 知床観光船事故で社長会見 「申し訳ない」謝罪

記者会見で謝罪する観光船運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長=27日午後、オホーツク管内斜里町

 知床半島沖で26人が乗った観光船「KAZU 1(カズワン)」が遭難した事故で、運航会社「知床遊覧船」(オホーツク管内斜里町)の桂田精一社長(58)が27日、同町で記者会見した。桂田社長は事故当日の出港について「最終的な判断は私がした」と認め、「被害者の家族に負担を掛け、申し訳ございません」と謝罪した。23日の発生後、社長が公の場で事故に関して説明したのは初めて。

 桂田社長によると、出港の判断基準について「波が1メートル以上、風速8メートル以上で欠航。視界が300メートル以上ないと出港できない」と説明。当日は強風、波浪注意報が出ており、社長も確認していたが、「船長と打ち合わせをし、海が荒れるなら引き返す条件で(出港を)決定した」という。

 天候の悪化が見込まれたのは午後からだとし、「天気予報を見ても問題はなかった」と釈明。その上で出港を決めたが、「今となっては判断的に間違ったと感じている」と述べた。

 カズワンとの交信に必要な事務所の無線アンテナが壊れていたが、桂田社長は事故当日に指摘を受けて初めて知ったとし、衛星電話の故障も把握していなかったという。「携帯電話や他の運航会社の無線でのやりとりが可能」と判断しており、「(安全管理は)行き届いていなかったと思う」と話した。

 消息が途絶える直前、カズワンからは「船首が浸水し、エンジンが使えない」と救助要請があった。カズワンは昨年起こした座礁事故で船首が破損していたが、「造船会社に直してもらい、その後検査を受け合格した。海上保安庁の船体検査でも指摘はなかった」と影響を否定した。

 安全面より経営を優先させたのではないかとの質問には、「会社の収益は常に考えているが、そのために無理に出港させたことはない」と強調。事故の原因について「私の至らなさだと感じている」と謝罪した。

 桂田社長は24日と25日に1回ずつ、海保などによる家族への説明に同席した。しかし、事故状況に関する詳しい説明がないとして、家族から不満が出ており、「私一人の力ではうまく対応できなかった」と釈明した。

「私の至らなさ」繰り返す 2時間半で土下座3回

「判断は間違っていた」。観光船「KAZU 1(カズワン)」が知床半島沖で消息を絶って以降、27日に初めて記者会見を開いた運航会社の桂田精一社長(58)。事故当日の出港判断に誤りがあったと認めた上で、「私の至らなさだ」と繰り返し、計3回土下座して謝罪した。

 斜里町内のホテルで行われた会見は、家族向けの説明会が長引き、当初の予定より1時間以上遅れて始まった。

 マスクを着け、黒のスーツに赤いネクタイ姿で会場に姿を見せた桂田社長は冒頭、立ったまま深々と頭を下げた。その後、意を決したように「このたびはお騒がせして大変申し訳ございませんでした」と口にすると、床に額をこすりつけた。席に戻ってからも涙声で謝罪の言葉を繰り返し、再び土下座した。

 報道陣からは厳しい質問が相次いだ。会見までに時間を要したとの指摘には、被害者家族への対応に追われたとし、「私一人では対応できなかった」と釈明した。その上で、安否不明者を捜索するために力を尽くすと強調。「被害者の方の気持ちを第一に考えて対処し、事故の原因究明の協力を全力で行う」と断言した。

 船体に傷が付いた昨年の座礁事故については、写真を示しながら傷の箇所や修理した部分を説明。一方で、船が消息を絶った際、衛星電話を積んでいなかったとみられ、安全管理が行き届いていなかったとの認識も示した。

 説明会での家族の反応を問われた際にはじっと目を閉じ、沈黙が続く場面もあった。会見は約2時間半に及び、桂田社長は最後にもう一度土下座をしてから、疲れた様子で会場を後にした。

続く荒天、捜索難航 民間船は2日連続見送り

知床半島沖の観光船事故で、第1管区海上保安本部(小樽市)などは28日も行方不明者15人の捜索を続けた。前日に続き天候が悪化、この日の波は4メートルほどに達し、漁船など民間船舶の捜索参加は2日連続で見送られた。

 海保はソナー(水中音波探知機)を使って海底を探査するなど、沈没したとみられる観光船「KAZU 1(カズワン)」の船体捜索も続けている。現場周辺は水深が100メートルに近い場所も多いため、深い海底を探査できる測量船を派遣中で、早ければ29日から捜索に加わる見通し。

 札幌管区地方気象台によると、オホーツク管内斜里町には28日、強風注意報や波浪注意報が出され、海上の風速は15~18メートル、波の高さは約4メートルだった。

 27日は、知床岬を挟んだ海域を中心に、船艇と航空機で行方不明者の捜索を続けた。天候の悪化により難航し、安否不明となっている15人の発見には至っていない。ウトロ漁協(斜里町)による漁船での捜索は、海が荒れたため中止された。

 沈没したとみられる船体の捜索も続き、海保はソナー(水中音波探知機)を使って海底を探査している。26日には漁業関係者から、消息を絶った付近でソナーに大きな影が映ったと通報があり、水深約30メートルの海底を潜水士などが調査。その結果、船体はなく、ソナーが反応したのは海底の突起だったことが確認された。

 また、同本部は27日夜、死亡が確認された11人のうち、新たに3人の身元を明らかにした。3人はいずれも男性で、佐賀県有田町の林善也さん(78)と岩永健介さん(74)、福島県会津若松市の小池駿介さん(28)。

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