間違い

間違い

 大型連休が終わった。帰省やレジャーを楽しんだ人々の一方で、それとは無縁の時間を過ごした人々がいる。知床半島沖で起きた観光船の遭難事故で消息を絶った、または亡くなった乗客の身内だ。同じように客船が出入りする苫小牧市に住むせいか、ずっと気になり案じている。

 遭難した観光船の乗客24人は、東京都や福岡、香川、兵庫、岐阜、千葉、福島県からの来道者。北国の世界遺産を巡る1隻には毎回、こんなに多様な土地の人が乗り合わせている。運航会社には当たり前でも、乗客には一期一会の顔ぶれであり、船上観光は特別なひととき。自分と無関係の事情で命を奪われるとは誰も思わない。

 運航会社は出港判断を「間違った」としたが、船長や甲板員をベテランから経験の浅い者に一度に入れ替え、衛星電話など連絡手段の確保を怠り、運行基準を順守せずに航行し…と間違いを重ねていた。これらを重大事故が起きるまで見過ごすつもりだったのなら、それも。

 非常時の際、いつも以上のことをしたり最善策を即断したりするのは難しい。だからなのか、その結果には日ごろから無意識にしている行為が現れやすい。観光船事故で死者が多数に上り、対応も遅かったのは、人命の関わる重要問題を常々看過してきた現れともいえ、普段からうやむやになっている間違いと向き合い、正常にする難しさを感じた。人ごとと思わないようにと気を引き締めている。(林)

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