沖縄ベイ・ブルース

沖縄ベイ・ブルース

 親戚に沖縄出身の女性がいる。会うと元気になる、明るい性格の女性だ。初めて会ったのは、東京で暮らしていた学生時代。狭いアパートだった。まだ沖縄が日本に復帰して、そんなに時が過ぎていない時代だったような気がする。

 その頃、ラジオから時々流れてきて、とてもいい曲だなと思った歌がある。ヒット曲を連発していた宇崎竜童さん率いるダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「沖縄ベイ・ブルース」。曲は宇崎さん、詞は妻の阿木燿子さんが書いた。

 こんな詞だ。〈約束はとうに過ぎて 影ばかり震えてるの 今すぐ旅立てるよう 手荷物はまとめてあるわ…〉、〈聞き違いなの教えてよ 待ちぼうけ残して 青い鳥が逃げた…〉。字面だけ追うと、沖縄に住む女性が本土の男と知り合い、捨てられるという内容。ただ、阿木さんが訴えたかったのは違う意味があるという。「約束を守らない男」が日本政府、裏切られた女が沖縄、逃げてばかりいる「青い鳥」が永田町や霞が関。直情的なメッセージソングを嫌う阿木さんが何度も沖縄を訪れ、魂込めて書き上げたそうだ。

 本土の捨て石になり、地上戦を経験した沖縄。今も在日米軍基地の7割が集中する。普天間飛行場返還で「最低でも県外」と約束した首相もいたが、ほごにされた。軍備増強する中国の「台湾有事」も懸念され、沖縄問題はより複雑化しているように映る。15日で日本復帰から、50年の歳月が流れる。(広)

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