運航会社、禁止場所に椅子 昨年事故時 国交省が報告書公表 知床観光船事故 座った乗客は負傷

運航会社、禁止場所に椅子 昨年事故時
国交省が報告書公表 知床観光船事故 座った乗客は負傷

 知床半島沖で26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故で、国土交通省は13日、昨年カズワンが起こした事故に関し、北海道運輸局が運航会社の「知床遊覧船」(オホーツク管内斜里町)に実施した特別監査での指導内容や、同社が提出した改善報告書などを公表した。

 運航会社は昨年の事故時、禁止された場所に椅子を置くなど船内の改造をしていた。事故後の抜き打ち検査で、同社の桂田精一社長が「安全あっての商売」などと話していたことも分かった。

 公表された指導文書によると、カズワンが昨年5月15日、浮遊物と接触し負傷者を出した事故では、本来設置が許されていない場所に椅子が置かれ、そこに座っていた乗客が負傷した。運輸局は、法令に抵触する改造を行わないことや、安全統括管理者と運航管理者が常に連絡を取れる状態を維持することなどを指導した。

 運航会社が運輸局に提出した改善報告書によると、同社は昨年7月に社内会議を開催。「営業所に安全統括管理者と運航管理者が不在の場合、補助者を配置し、船長との連絡体制を構築することを確認した」などと報告していた。

 別の資料によると、昨年10月に運輸局が同社に実施した抜き打ちの事務所訪問では特に問題は見つからず、運輸局は改善を確認したと結論付けた。訪問時、桂田社長は担当者に「安全あっての商売」「安全運航に努める」などとコメントしていた。

 また、改善報告書に添付された運航記録簿は、風速や波高の数字が全て同じで、信ぴょう性に疑いがあることも分かった。

 今回の事故をめぐっては、桂田社長が安全統括管理者と運航管理者を兼務していたのに事故当時、事務所にいなかったことが判明。代行となる「運航管理補助者」もいなかった。

  国交省指導内容 チェック甘さ露呈 「補助者」口頭申告のみ
 新たに公表された「知床遊覧船」に対する指導内容などの文書からは、同社の安全意識の希薄さに加え、国土交通省北海道運輸局の緩い監査と、行政指導後のチェックの甘さも明らかになった。

 昨年7月の指導を受け同社は、営業所に安全統括管理者と運航管理者が不在の場合、補助者を配置すると報告。しかし、補助者については届け出義務がないため、同局は口頭申告のみで認めていた。その結果、申告された人物が本当に補助者として従事していたのか、事故当時にも補助者だったのかはっきりと分からないという。

 安全統括管理者と運航管理者は桂田精一社長が兼務していたが、事故当時は営業所を離れていた。公表された桂田社長の運航管理者選任届には、「運航管理の実務経験が3年以上」という要件を満たすと記されていたが、同局は裏付けを取らずに申告ベースで通していた。

 昨年10月に行われた同局の抜き打ち検査で、同社は運航管理者と船長との連絡に使う携帯電話の会社を変更し、つながるようになったと申告していた。

 しかし、事故の3日前に行われた代行機関による検査では、変更前の携帯電話会社に戻すと申請し、認められていた。申請された船長の携帯電話は事故当時、通信圏外だったとみられている。

 事故前の検査は「日本小型船舶検査機構」が代行していた。国交省の担当者は「機構との情報共有ができていなかった」と落ち度を認めた。

 岬往復運航は今季中止 ウトロ 事故受け観光船業者
 観光船「KAZU 1(カズワン)」が沈没した事故をめぐり、地元斜里町ウトロ地区の「知床小型観光船協議会」が、知床岬を往復する長距離コースの運航を今シーズンは中止することが13日、分かった。加盟する業者が自社のホームページで明らかにした。同コースは事故現場付近を通過するため、配慮したとみられる。

 現場より手前のルシャ海岸などを巡る短距離コースは月内の自粛が決まっている。6月以降については「現時点では判断できない状況」としている。
 
 斜里町 ふるさと納税受け付け開始 事故の対応費などへ
 斜里町は観光船「KAZU 1(カズワン)」が沈没した事故に関し、ふるさと納税を活用した支援の受け付けを始めた。寄付者からは「行方不明者の捜索に当たる漁船の燃料代に充ててもらえれば」といった声が寄せられているという。

 9日から受け付けを開始し、10日までに102件の申し込みがあった。町の担当者は「頂いた気持ちを大切にしながら、具体的な使い道を考えていく」と話している。
 
  「断腸の思い」黙とうささぐ 斜里町議会
 観光船沈没事故を受け、13日に開会した地元の斜里町議会では、馬場隆町長や町議らが冒頭に1分間の黙とうをささげ、犠牲者らの冥福を祈った。

 馬場氏は町政報告で、「知床が大好きで何度も来られた方もいる。このような事態に至ったことは断腸の思いだ」と事故に言及。町の対応については、「救助や捜索への協力に加え、ご家族への対応で希望に応える努力をしてきた。悲しみを共有しながら行ってきた」と述べた。

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