黙食

黙食

 小学生時代の学校での話。給食の配膳が終わって食べ始めると、おもむろに前の席から順番に一人ひとりが大きな声で話を始める。

 「昨日はおばあちゃんが家に遊びに来たよ」「お母さんが風邪ひいて病院に行った」「弟とけんかして鼻血が出た」「放課後の野球の試合でホームランを打った」など、さまざまな話題が飛び交う。

 当時の担任のアイデアだと思うが、これが毎日だからたまらない。1人15秒程度。4年生に人前で話すような話題がそうそうあるわけもなく、ちょっと和やかであり、苦痛な時間に。

 しかし、これが慣れると案外面白い。「蚊に刺された所がかゆい」「昨夜、魚の骨が喉に刺さって取れなかった」といった苦しまぎれの話も飛び出し、聞いている担任も「つまらん…。もっと楽しい話題を」と苦笑い。毎日のようにクラスに笑いが広がった。

 当時、クラスには1日に1回も口を開かないようなおとなしい子もいた。それでも給食時間には必ず話をした。今考えると、給食時間の子ども同士の話題提供は深い意味があったような気がする。

 新型コロナウイルスの感染防止対策で、小中学校の給食で2年間続いていた黙食が全国的に見直される動きが出てきた。給食風景に日常が戻りつつある。給食は無駄口の応酬も一興か。何気ない学校生活の大切さを改めて実感できる機会になってほしい。(高)

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