矛盾

矛盾

 矛盾という言葉の意味を習ったのは何歳頃だったろう。どんなに頑丈な盾も突き破る矛(ほこ)とどんな鋭い矛でもはじく盾を売る商人が「じゃあこの矛で、この盾を突いたら?」と問われる話だ。

 そんなふうに「理屈に合わないことを矛盾という」との説明だったと思う。納得できた。

 ロシアのウクライナ侵攻が2月24日に始まって4カ月が過ぎた。爆発し燃え上がる戦車や装甲車。戦闘機やミサイル弾の攻撃の映像が毎日、テレビの画面に映る。敵のものより速く硬く無敵のはずの武器が、兵士や非戦闘員を道連れに、次々と残骸になっていく。平穏な生活の場であったはずの中高層や低層の住宅が戦車砲などで至近距離から撃たれ、原形をとどめないほどに破壊されていく。学校も病院も教会も工場も、すべて。

 「武力による一方的な現状変更の試み」は終わらない。占領して領土を拡張するのが目的なら、なぜこれほどまで破壊するのだろう。ロシアでは、爆撃し尽くした状態のことを「解放」と表現するらしい。解放とは、束縛や制限を取り除いて自由にすることではないのか。命と引き替えにロシアを選ぶことを強制してなぜ解放なのだろう。砲弾におびえ逃げまどう高齢の女性や子どもたちを見て思う。

 日本では第26回参院選挙が公示された。物価高騰などたくさんの課題が並ぶ。私たちは隣国の引き起こした戦争を背景に何を選ぶのだろう。真の平和、真の安全とは。考えたい。(水)

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