苫小牧市の路線バスに乗ったのは何年前だろう。思い出せないほど昔のことだ。通勤は自家用車だし、苫小牧を離れる時もバスを使ってJRの駅まで行くコースは選択肢に浮かばない。これでは利用者が増えないはず、と思いながらバス停が遠い。
路線バス事業は市の直営から道南バスに運営が移譲されてちょうど10年。行政改革の目玉として、かんかんがくがくの激論を経て実現した。当時は職員の対応や路線維持など移譲手段への議論に比重が置かれ、利用者を増やしていくための方策は先送りされた感は否めない。
この10年で利用者の右肩下がりは続いた。直営時に約5億円がバス事業の赤字補てんに使われていたことに比べれば、現在の補助金の1億1千万円は少ないものの、赤字体質は変わらないまま。バス事業を残すため、いつかは路線の抜本見直しという大手術を受けることになる。
地方都市の路線バス問題は共通の悩みだが、千歳市での取り組みは印象的だった。地域を通る路線の廃止案が浮上したときに動いたのはそこの町内会だ。臨時券売所を開設したり、住民に回数券販売を促すなど利用促進に精力を注いだ。その結果、路線は維持された。
利用促進策はバス会社が主体的に行うが、利用者からの知恵や働き掛けも重要だ。利用者の急増につながる特効薬は見つからないにしても、赤字幅の抑制策は緊急課題。まずは路線バスに乗ってみようと思う。(昭)









