喜怒哀楽の中で最も制御が難しいとされる怒。6秒我慢してピークを抑えるアンガーマネジメントを実践し、のみ込んだところでそれが消滅するわけではない。人気お笑いコンビダウンタウンの松本人志さんがテレビ番組で、「自分で心配になるくらい怒らなくなってしまった」と話していたのが印象に残っている。「怒りから生まれてくる笑いもあるので、こんなに怒らないのはあまりよくないんじゃないか」とも。日本人は総じてあまり怒らなくなった。
政治への怒り方も忘れてしまったか。参院選の選挙区の投票率は52・05%。応援演説中の安倍晋三元首相への銃撃事件があり、主要政党に任せておけないと名乗りを上げたミニ政党、諸派が一定の存在感を示した今回、2回連続の50%割れは回避したが、2人に1人が投票しなかった。依然として低水準にあり、苫小牧市は過去2番目に低い46・28%で全道最低だった。
以前、南米出身の知人が投票率の低さを繰り返し報じるニュースを見て「社会や政治への不満はくすぶり続けているのになぜか」と不思議がっていたのを思い出す。棄権は白紙委任を意味しており、返す言葉がなかった。「人間にとって最大の罪は憎しみではなく無関心」と語ったのは、ノーベル文学賞劇作家のジョージ・バーナード・ショー。無関心こそが非人間性の本質で「希望を抱かぬ者は失望することもない」と説いた。私たちはもっと怒ってよい。(輝)









