野党不在

野党不在

 安倍晋三元首相が凶弾に倒れて1週間。史上最長の首相在任期間を務めた、キングメーカーとして厳然と力を持つ政治家を狙った暗殺でありながら、この間の報道で動機は、宗教団体が絡む家庭崩壊の恨みを安倍氏に向けた不条理の様相を呈してきた。銃を自作するほど闇を心に膨らませた犯人の人生はどんなだったのか。救済や再生と対極にある暴力と破滅の中に犯人の精神がある。

 安倍氏は、地域との関わりでいえば首相在任中の2018年9月、胆振東部地震の発災直後に厚真、安平両町を訪れ、避難所の町民を激励した。説明を尽くすべき疑惑や問題を幾つも残したままの安倍氏だが、理不尽な非業の死にただ冥福を祈る。

 運動最終盤の銃撃事件、参院選は各党が暴力に屈しない民主主義を叫び、世が騒然とする中で行われた選挙として私たちは記憶に刻む。結果は事前の世論調査を裏付けるように自民党が勝利し、1強状態がさらに進んだ。連立与党の公明党は議席を減らし、野党は立憲民主党が低迷、日本維新の会が躍進した。

 議会制民主主義の健全なありようとはどういう状態だろう。コラム子は1強の現状を健全とは思わない。しかし、結果は原因があっての実相。投票率の低さも、有権者の2人に1人は投票スイッチが入らなかったためだ。政権を監視し、国民と政治に選択肢と対案を提示する野党が役割と存在意義を示せないでいる。参院選から見える景色に野党が不在なのは錯覚か。(司)

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