キミ

キミ

 函館へ向かって国道5号を南下し渡島管内森町市街地手前のトンネルを抜けると右側の道路脇に、確か赤い文字で「キミ」と手書きされた段ボール製の看板が何枚か並んでいた。今もあるだろうか。

 子どもの夏休み、わが家が家人の実家へ帰省するときに必ず見た看板だ。キミは浜弁でトウキビ、トウモロコシのこと。石垣福雄著「北海道方言辞典」によると、海岸沿いではキミ、トーキミと言う人が多いそうだ。ゆでたてで湯気を噴きながら大きなざるに並べられ、ピカピカと光るトウキビには「キミ、食わねガ」という、ぶっきらぼうで優しいおじいちゃんの浜弁が似合っているかもしれない。

 浜弁の看板の思い出から長い時間が過ぎ、また盆の帰省が話題になる季節。わが家も関東に住む孫たちとの電話や、やりとりする短い手紙の中に「なつにはかえるからね」という一言が加わっていた。しかし雲行きが急変した。北海道を含め、全国が新型コロナ感染の第7の山に迷い込んだ。新聞やテレビの棒グラフの傾斜はいよいよ鋭い。1日当たりの新規感染者数はきのう10万人を超えた。2月上旬以来だという。全国の延べ感染者数も、1千万人を超えた。

 ウイルスがまん延しても「おいしい北海道」の季節はやってくる。ネットメロンやスイカ、サクランボ、トウキビが店頭に並び、新ジャガのお目見えも遠くない。孫たちの喜ぶ顔を想像しながら、宅配便の手配に追われる夏が、また始まった。(水)

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