船員奉仕会

船員奉仕会

 旅人をもてなしなさい―。聖書に記されている、その言葉を原点に外国人船員をもてなす市民運動は、全国的にほとんど例を見ないものだった。苫小牧キリスト教船員奉仕会が6月末、36年間にわたる活動に終止符を打った。国内各地の港まちの中でも極めて特異な団体だっただけに、残念でならない。

 同会は、国際航路で苫小牧港に入る貨物船の船員を憩いの施設シーフェアラーズセンター(旧シーメンズクラブ)に招き、くつろぎの場を提供する奉仕を続けてきた。関わるボランティアはキリスト教徒であろうが、なかろうが関係なし。1年を通じて過酷な船上生活を送りながらも産業、暮らしを陰から支える船員への感謝。ただそれだけを思っての取り組みだった。これまでに受け入れた人数は延べ15万人超。苫小牧市民との触れ合いが忘れられず、寄港を楽しみにする船乗りも多かった。

 だが、新型コロナが遮った。船員に上陸許可が下りにくくなり、センターも開けない。2年前から休止状態が続き、先行きも見通せない。解散という関係者の選択は、苦渋の判断だったに違いない。

 会の草創期、記者も一員として運営に携わった。船が港に着くたび、親交を深めた若いフィリピン人船員の実家を訪ねたことや、中東出身の船長との交流も懐かしい思い出だ。コロナが終息した後、何とか再開できないものか。「海の日」のきのう、そんな思いを巡らした。(下)

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