領土

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 新聞で、毎日のようにヒグマの目撃情報が報道される。苫小牧市やむかわ町、白老町の道路を日中や夜間、自在に歩き回り通報される。

 この数年は、人を襲う事故も増えている。昨年6月には札幌市の住宅街で男性が襲われ、140針を縫う大けがを負った。15日午後、本棚から羽根田治著「人を襲うクマ 遭遇事例とその生態」(山と渓谷社)を取り出して読み直していると、テレビから緊張したアナウンサーの声。渡島管内松前町で、自宅裏の菜園で作業をしていた高齢夫婦がヒグマに襲われたという。偶然とは、恐ろしいものだ。

 「人を襲う―」によると道内でヒグマの襲撃によって複数の死者が記録されたのは1915(大正4)年12月の苫前村三毛別(現留萌管内苫前町三渓)の事故(死者8人)。23(同12)年8月の沼田町(現空知管内沼田町)での事故(同5人)。70(昭和45)年7月の福岡大学ワンダーフォーゲル同好会一行の日高山脈カムイエクウチカウシ山(1980メートル)での事故(同3人)の計3件。苫前と日高山脈の事故は詳細な調査報告が残されて、ヒグマ対策を考える際のつらい資料になっている。

 互いを「怖い者」と恐れ合ってきたはずの人とヒグマ。高齢化や過疎化で力関係が変化している。餌を与えて写真を撮る観光客も現れ問題になっている。ヒグマは歩き回って新しい領土を確認中か。彼らの凶暴さや執着の強さ、爪や歯の鋭さにおびえながら記録を読み返す。(水)

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