歌手の命ともいえる喉にメスを入れ、長い年月をかけて身に付けた声を失うという出来事を乗り越え、再びマイクを握った歌手がいる。苫小牧市を拠点に活動する演歌歌手栗原ちあきさん。先月は樽前山神社例大祭や自身が企画したコンサートで、こん身の歌唱を披露し、観客に感動を与えた。栗原さんは「一時は引退も考えたけど、応援してくれる人に背中を押され、また頑張ろうと思った。新しい声を自分の魅力に変えたい」とほほ笑む。
栗原さんは夕張市出身。1995年6月、「北の恋女/女の未練」で歌手デビューした。オリジナル曲の制作にも精力的に取り組み、道内各地の祭り会場などで披露。苫小牧市の観光大使も務めた。
喉に違和感を抱き始めたのは3年ほど前。持ち味のパワフルな声が出しにくくなり、市内や近郊の耳鼻咽喉科を何度も受診したが、異常なしと診断され続けた。2年ほどもやもやとした日々を過ごしたが、事態は次第に深刻化。歌った後に会話するのがままならなくなり、「大変なことが起こっている」と不安でいっぱいになったという。
ようやく原因が分かったのは昨年10月。東京都内の声帯専門医を受診し、ポリープの発見に至った。歌手の声帯にとって致命的な場所にできており、医師からは「歌えるようになる確証はない。手術をせずに歌手を辞めるか、再び声が出るようになる方に懸けて手術するか」と選択を迫られた。栗原さんは悩んだ末、手術を決断。3月に摘出手術を受け、発声練習を重ねた。
日常会話は支障なくできるようになったものの、歌声は明らかに変化した。得意な高さの音程が出にくくなり、特に、おはこの演歌でそれが顕著に表れた。オリジナル曲も声がかすれて歌うのが困難になったという。
「私の歌手人生は終わった」―。プロとして満足できる歌を客に届けられない現実に、引退も考えた。絶望の中、再び歩き出す力となったのは、デビュー当時から支えてくれた人の言葉だった。「いいじゃない。新しいちあきちゃんで」
自分を変えることを決意し、栗原さんは新しい声を生かせる曲探しから再スタート。6月に自身主催のコンサートで半年ぶりに歌った。先月も樽前山神社例大祭や主催コンサートで”新生”栗原ちあきを披露した。
どの会場でも観客が「待っていたよ」「やっぱり、ちあきちゃんの歌はいいね」と声を掛けてくれた。「皆さんがいてくれたから、ステージに帰ることができた」と感謝する栗原さん。声帯をうまくコントロールする方法をまだ見つけられないというが、それでも「新しい声は私の武器。喜んでくれる人のため、いつまでも歌い続けたい」と力を込めた。



















