野生動物と人との距離や関係の変化が各地で問題になっている。北海道では人里へのヒグマの出没増加が大問題だ。本州ではニホンザルが住宅に侵入したり、イルカが人間をかむ事故が起きている。
先日のテレビのニュースに、三重県などで窓から室内をのぞき込むサルの姿が映っていた。幼児を襲って爪で引っかいたり網戸を開けて室内に侵入したりもするという。指先が器用で人間よりはるかに身軽。高い知能を持つといわれるサルの接近は実に不気味だ。農作物の被害から、次の段階に入ったようだ。福井県内では海水浴場に現れたイルカが子どもをかんだニュース。潜水をしている人間に体当たりする様子も写されていた。利口で優しい動物―。イルカにはそんな印象があったが、もう修正をした方が良さそうだ。
野生動物に餌を与え、果樹や農作物の管理が不十分になりがちな人間の側にまず原因がある―という専門家の分析が多いようだ。「餌の提供はサルの世界では、下位のものが上位のものにすること。人間を下位のものだと学習させることは危険」
北海道では先住民や開拓期の入植者が、ヒグマの強さや恐ろしさを学んだ。行動する時間に法則がない。火に拒否反応を示さない。逃げるものを追い掛ける。食べ残しがあるうちは何度でも現れる―。悲惨な経験に裏打ちされた知識を一瞬でぶち壊すのは安易な餌やりだ。相手がヒグマでもサルでも、責任の多くは人間の側にある―と。(水)









