過去数十年にわたって私たちは歴史上で最も平和な時代を謳歌(おうか)してきたといえるでしょう。この70年間、超大国間の直接的戦争は起きていません。他国への侵攻というやり方は、終わったものだと思っていたのです―。
ロシア軍のウクライナ侵攻開始が2月末。爆撃と殺りく、破壊の映像をテレビ画面で見続けて5カ月以上が過ぎた。多くの人が感じ続けている恐怖や違和感の根幹を、宝島社新書「ウクライナ危機後の世界」は、そんなふうに解説する。経済や軍事問題などを専門とする賢人の提言や分析が分かりやすい。私たちは、戦争を知らないのだ。残虐が戦争犯罪として糾弾されることはあっても、兵士も非戦闘員も命はどこまでも軽い。「戦争は、してはならない」という理念の軽さに、驚かされる。
6日の広島も、きのうの長崎も、非核と平和を願う式典の参列者が不安の中心に据えたのはプーチン大統領の核使用をにおわす威嚇だ。この戦争がどのように終わるのか。行方がまったく見えない。穀物の輸送船が出港しても、国連本部で核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開幕し、日本の首相として初めて参加した岸田首相が演説を行っても、不安は消えない。戦争の火種はウクライナ以外にも次から次へと控えているのだ。
第2次岸田改造内閣がスタートする。前任者の不人気の重しから少しずつ離れてどんな平和を探るのか。また核の傘の強化か、核共有論の具体化か。(水)









