名キャプテン

名キャプテン

 2008年10月、苫小牧市内のホテルで関係者らによる壮行会が催された。2年後に迫ったカナダ・バンクーバー五輪切符を懸けた最終予選に臨むアイスホッケー女子日本代表を励ます集まりだった。

 中国開催の予選で、当時の北海道アイスホッケー連盟会長で女子競技の父、83歳になっていた故河渕務さんが出席。渡航のチームに同行する計画を立てていたものの体調を案ずる医師の診断で果たせなかったと明かした後、「五輪切符を持ってきてもらいたい」と顔触れに呼び掛けた。記者はその場にいて、代表一員に選出された苫小牧東高生徒の大澤ちほ選手が丸刈りの頭髪になっていた姿を見て並々ならぬ決意に驚きつつも、「頑張ってきて」と声を掛けた。

 期待を集めたメンバーは奮戦も中国に敗れ、予選突破はならなかった。続く14年ロシア・ソチ五輪出場を懸けた13年の最終予選は欧州開催。悲願を果たそうと燃えた代表の若き主将はフォワードで突破力が身上の大澤選手だった。王子製紙チームの同ポジション、かつては五輪出場を目標にした元男子代表の一員で父の広利さんらが苫小牧でテレビ中継を一心不乱に応援する姿を取材させてもらった。

 そこから五輪3大会連続出場時の代表主将に選ばれ続けた彼女は引退を決意。きのうは会見の場で「仲間と思いを共有して、目標に向かって突き進んでいくことが好きでした」と語った。30歳。大澤選手が輝かしい競技者生活を全うした。(谷)

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