1カ月の日数が30日またはそれ以下の月を「小の月」という。二月と四、六、九、十一(士=さむらい)月が小の月だから「西向く侍小の月」と覚えると暗記が簡単で便利―という言葉遊びがある。
小学校は6カ年皆勤だったはずなのに、この実用的な言葉遊びのことは頭に残っておらず家人の独り言を聞いて知った。
覚えた時には、その価値の大きさを理解できない、宝物のような知恵がある。掛け算の九九も、記憶するまでは試験などが繰り返し行われ苦痛だったが、一度覚えてしまえば60年以上たっても使い続けられる知恵。同年代がガヤガヤと集まって学ぶ意義は、こんな所にもある。
先日の新聞に、2020年の国勢調査で最終学歴を「小学校卒業」と答えた人が全国に約80万人いた―との記事があった。都道府県別では北海道の5万4286人が最多だったという。通学が難しかった時代の高齢者だけでなく、いじめや不登校で学校を離れる若い人もいて、義務教育の根幹に関わる問題になっている。考えさせられる。
小の月に話を戻す。西向く―を知らなかった自分は、拳を握り締めて、人差し指から小指までの付け根の関節の、山を大の月、谷を小の月とする確認方法を使ってきた。一つ問題があった。大小の月を確かめるたびに左手を握り、関節の山と谷を確かめるしぐさが、どうもおじさんに似合わない。これは誰に教わったのだったか。拳を隠して幼なじみの顔と名を探す。(水)









