夏空に、少し威張ったような白い雲が浮かんでいる。3年ぶりの行動制限のない夏。感染拡大「第7波」は続くものの、札幌では大規模なビアガーデンや花火大会も復活。お盆も過ぎて、日中はまだ蒸し暑いビル街だが、夕方から涼しい風が吹き始めた。戦後77年目の夏が終わろうとしている。
一冊の絵本がある。絵は葉祥明さんが描き、文は柳瀬房子さんが担当した「サニーのおねがい 地雷ではなく花をください」(自由国民社)。発刊以来、四半世紀をかけて世界で61万部以上を売り上げた作品だ。
葉さんの絵がとてもきれいだ。でも、松葉づえの子どもたちの表情は物憂げだ。戦争が終わって平和になっても、半永久的に被害をもたらす対人地雷について、ウサギのサニーが教えてくれる。葉さんは「まえがき」で、こうメッセージを送る。「指先をちょっと切ったり、小さなトゲがささっただけでも、私たちは苦痛を感じます。だのに地雷で手足をなくした子どもたちには、この先とても不自由で長い人生が待っています」
世界では1億1000万個以上の地雷が埋設されている。年間に除去しているのは、資金不足で約10万個にとどまるそうだ。作品では「ひとつ取り除いたら花の種、ひとつ取り除いたら木を一本植えましょう」とサニーが呼び掛ける。この絵本の収益は、難民を助ける会の地雷撤去に活用されている。1冊購入すると、地雷原10平方メートルがクリアな土地になるという。(広)









