正しさ

正しさ

 元少年兵、マフィア、カルト教団…。危険な世界の住人の食をテーマにしたテレビ番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」は書籍版も熱い。著者は同番組のプロデューサー上出遼平氏。「飯が見たい」を口実に「ヤバい」現場に迫るドキュメンタリーの裏話がつづられている。突撃取材だけに敵視されることもしばしばで、その都度のやりとりが面白く、勉強にもなる。

 特に印象に残っているのは、リベリアの内戦で殺し合った者同士がギャングとして共同生活する場面。貧しい家庭は彼らを頼り、その保護の下で暮らす。警察官までそこに身を寄せる。幼い少年兵が前線に出る時、呪術師に助言を求め、無意味な殺りくに意味を得るエピソードは衝撃的だった。

 死と隣り合わせの過酷な生活の中でも自らの境遇と折り合いを付け、地をはうように生きる人たちがいる一方、極度の不安、悲しみに耐える過程で死や病に意味を求め不可解、過激な行動に出てしまう人もいる。正しいとか、正しくないとかを超越した世界。最近クローズアップされている「宗教2世」問題も闇は深い。「正しさは自分で決めるもの。判断を誰かに委ねたらどこまでも正しさを手に入れることはできない」と上出氏。「ここの正しさがあちらでは悪とされ、あちらの悪はこちらで正として認定される」。そういうことはあちこちに存在しているし、そんなふうに世の中はできている。現実は多面的だ。(輝)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る