記憶

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 解体工事の行われていた苫小牧市西部のスーパーマーケットが、先日通り掛かると跡形もなく姿を消していた。建物の色や形が記憶からも消えるのはいつ頃になるか。

 新人記者当時に商店街の取材を担当した。大型店進出が相次ぐ時代だった。服や靴を選ぶ趣味はなかったが消費者のため、地域商店街のため―と記事を探して歩き回った。解体されたスーパーも構想の段階から取材した。担当者の名や顔を覚えている。もう40年も前のことだ。

 巨大な駐車場を持つ全国規模の大型店に、通り商店街や地元スーパーが対抗していた。アーケードを作り、夏の週末に催し物を開けば、通りが買い物客で埋まることもあった。商店街には論客も多く先進地視察が行われていた。しかし転勤で街を離れ、たまに見る商店街は少しずつ、確実にやつれていった。

 食料品を中心とする地元や近郊のスーパーが住宅地を拠点に頑張る時代もあったが、やがて道内大手の店舗に主導権が移った。中心街でも家具屋さんや貸しビルの跡が空き地になっている。閉店や解体による消滅以外に業種変更も各地にある。消費者の高齢化が進み、住宅街の空き家も増える。購買量は着実に減っていく。安泰はない。駅南にそびえる元大型店のビルが、いよいよ大きく高く見える。

 来年1月に閉店する帯広の老舗百貨店「藤丸」の閉店記念セールが始まったという。苫小牧の「鶴丸」の建物や一帯のにぎわいを、ふと思い出した。(水)

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