自走

自走

 千歳市内には「C経路」と呼ばれる、戦車などの走行道路がある。戦後は米軍が東千歳駐屯地に駐留し、北海道大演習場との移動で、A、B、Cの3経路を使ったとされる。AとBは現在の新千歳空港や国道36号を縦断するため使わなくなり、Cのみ残ったのが名前の由来と聞いた。

 当方も千歳勤務時代、C経路でたびたび戦車と遭遇した。最初は映画のような光景に違和感を覚えたが、一緒に信号待ちをしたり、時に追い抜いたり、すぐ日常の一こまになった。通行日時は事前に告知されており、移動の繁忙期に集まるマニアらの姿が、戦車の公道自走が非日常という事実を思い出させた。

 せんだって陸上自衛隊第7師団の長距離機動訓練を取材した。千歳から苫小牧港まで公道約30キロを、戦車など戦闘車両が安全を確保しながら、時速20キロ以下でのろのろ運転。後続の車が追い越しやすいよう、車間距離を約100メートルずつ空けて進み、車両後部に「追越注意」の黄色い看板も。さすがに戦車をあおる不届き者はなかった。

 訓練はあらゆる事態に即応する態勢を整える狙いだが、公開は「見せつける」意味もあるのは自明の理。敵が手を出せないと思えば事も起こらず、戦わずして勝つ国防は、日々の訓練でこそ保障される。一方で非日常が日常になる慣れ、まちなかの訓練恒常化は、反対の声も根強い。賛否それぞれの立場で、国防を考える機会になれば、それも意義深いと思う。(金)

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