流言

流言

 手元の辞典によると「流言飛語」とは「世間に言いふらされる根拠のないうわさ」。関東大震災の時「井戸に毒が入れられた」などの情報が流され多くの在日朝鮮人が犯人として殴打され殺された。

 根拠のあいまいな流言は、今も身近にある。2011年3月11日の東日本大震災の数年後、親類の葬儀に参列した時のことだ。お坊さんが法話の中で、東北地方の悲惨に触れ「賊が被災地に入って、指輪を取るために遺体の指を切断しているそうです―」。全国紙の記事によると指輪泥棒は、国内外を問わず大地震に際して流される、定番の流言という。むごたらしい犯罪への恐怖だけが強調される。

 18年9月6日の胆振東部地震の数日後には、知人から電話があった。家具などの被災状況を判定し、片付けの支援をしてくれるボランティアの話だ。「特定の業者と取り決めをして品物を選んでいるだけ。気を付けた方がいい―と知り合いが言っていた。聞いたことあるか?」

 1923年9月1日の関東大震災の発生から99年。前述の記事では住民調査に基づいて、こんな分析結果も紹介していた。「うわさを信じた人の割合は、性別・年齢・学歴・収入、外国人との交流歴や被災経験の有無のいずれとも関係なかった」

 私たちは国や道が発表した大地震と津波の被害想定への対処に頭を悩ませている。すぐに実践できる対策もある。情報選択の訓練だ。何を信じるか。正確な情報を誰に広めるか。(水)

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