納得

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 「新しい車が欲しい。200万円ぐらいかな」と配偶者に提案。「詳しい見積もりはないの―」と言われて出した見積書には、6倍以上の合計金額と「諸費用は変更になる場合もあります」の文字。さて車は購入できるだろうか。

 高額の買い物をめぐる家庭内の、そんなやり取りが目に浮かんだ。安倍晋三元首相の国葬の実施に当たって、政府は当初、経費を2億5000万円と発表した。しかし警備費用などが不明と指摘され、改めて16億6000万円の金額を示した。当初の額の何と6倍以上に当たる。国民の国葬反対への声が世論調査のたびに膨らみ、デモや集会への参加者が増えていく。野党から国会での質疑要求を受けた政府の窮余の中央突破作戦だったが、結果的には国葬批判の火に油を注いだかもしれない。

 8日に行われた国会の閉会中審査。衆参両院の議運で岸田文雄首相が答弁に立ち、国葬の趣旨や理由を説明した。国民は納得できただろうか。審議経過も記録文書の存在もあいまいにした「モリカケ」問題同様、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と安倍元首相の関わりもまた、真相は明かされぬまま、盛大な国葬の闇へ姿を消すのか。

 さて新しい車は手に入るか。わが家ならきっと「ダメ」の一言。「そんなにみんな呼ばなくてもいいんだよ。まァ、故人の感想ですけどね」。テレビで少人数の家族葬を呼び掛ける、頭に光輪を載せたおじいちゃんの笑顔がまぶたに浮かぶ。(水)

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