８月末、コンパクトカーの代表格の日産自動車「マーチ」が「国内販売終了へ」と各種メディアで報じられた。タイでの日本市場向けの生産を終え、在庫限りで国内販売を終了するという。日産は公式に何もコメントしていない。

　６０代のコラム子は２０代の時、初めて買った新車が初代マーチだった。人気アイドルの近藤真彦さんをＣＭに登場させ、ターボ（過給機）搭載車を前面に出して「マッチのマーチ」と売り出し、大々的に販売した。イタリアの巨匠ジウジアーロによる外観、遊び心満載のコックピットなどいずれのデザインも当時としては個性的で、市場の開拓を狙った戦略車だった。とても気に入り、家庭を持った後も家族が増えるまで大切に乗った。現行モデルは４代目。１９８０年代の初代から進化しながら、マーチは４０年にわたって小型車の顔として走り続けてきた。

　エンジンで２０世紀の世界をリードした国内自動車産業は、電気自動車（ＥＶ）で他業種をも含む内外の企業と国の攻勢に押されている。日産は国内ではＥＶのコンパクトカー分野で先駆けている。現行マーチの国内販売は終えるが、欧州では別の名前で展開されているマーチの後継モデルの話題がＥＶである。あるいは世界戦略の中で新たなモデルにつながっていくかもしれない。再びその名を冠するかどうかは分からないが、４０年にわたって存在感を示したマーチがこのまま消えるのは忍びない。未来を勝手に期待する。（司）