鎖国

鎖国

 先週、思いがけず、出くわした光景だった。新千歳空港の国際線ターミナルビル出発ロビーで、航空会社の客室乗務員たちが研修に励んでいた。車いす利用者らの介助方法を学んでいるところで、2人一組になってベンチと車いすの移乗を繰り返していた。周囲に旅客が誰一人としていないからこそできる実践の場だった。

 政府は新型コロナウイルスの水際対策を段階的に緩和してきたが、新千歳の国際線はにぎわいを取り戻せずにいる。韓国・仁川線の旅客定期便が2年4カ月ぶりに再開した7月、国際線利用客はわずか2500人余りだった。緩和の効果はほぼ表れず、同路線は再び運休を余儀なくされた。

 新千歳はコロナ流行前、九つの国や地域と計18路線を結び、月800便以上を運航。中でも韓国路線は中国と並び、3割前後ずつを占めるドル箱路線だった。コロナ禍でも本道観光への人気は高いままで、韓国の航空各社も真っ先に復便を図ってきた。その大きな期待に応えることができず、日本離れが進まないか懸念している。

 「コロナ鎖国」と称される日本の厳しい入国制限。入国者数の上限設定や個人旅行の禁止、ビザ取得などの水際対策を、政府はさらに大幅緩和する見通しだが、外国人旅行客の回復に限れば、もはや待ったなしの状況だ。「鎖国」のない他の主要国から置いてきぼりの今、ウィズ・コロナ政策の早期構築が求められている。(金)

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